「ちはっ!」って入ってくる時の顔はいつもと違ってた。君が思う程強くないけど、
でも君よりは強いと思ってる。だから君が今日みたいに影を差して現れると心が苦しいんだ。
支えたいと思っても君は強がって平気だって強弁するね。それは時に滑稽だけど、
でもそれが君なりの気遣いだって分かってる。
隠れて泣くのも勿論自由さ、でも時に頼ってくれてもいいんじゃない?って不満を感じるんだ。
顔をうずめるには頼りない僕だけど、それでも優しく包んであげたいって思うんだ。
決まって泣いた後は明るくふるまうその癖はとっくに見破られているよ。
だけど君の優しさに乗っかるんだ。だからどうしたの?っとは聞かないけれど、
本当は心配してるよ。いつか堂々と涙を見せてくれる日が来ると信じて
今日も君の強がりに甘えるんだ。
もうすぐ卒業だよ。ずっといたいと思ってる。
君から先に就職先が決まった事に少しだけ焦ったけど。
でも君と出会ったのも春だったね。
そういえば出会った時も片目を瞑って「ちは!」って挨拶してた。
その癖は四年間変わらなかったね。でももう君の心が開くのを待てなかった。
昨日の夜君の知らない誰かと夜を共にしたよ。
今朝の君のいつもと変わらない挨拶に後ろめたさを感じたのさ。
君と同じように僕も心を開けなくなってしまった。
これから重ねる噓の分だけ君との距離をつめられず、ただ冷めていく。
今朝の「ちは!」が今までで一番堪えたよ。
互いの本音が見えずに仮面をかぶった二人だったね。
まるで暗闇の中にいるようだった。そう変わったのは僕だったんだね。